第26期竜王戦第4局1日目 渡辺明竜王-森内俊之名人【相矢倉】。
第26期竜王戦 【第1局①/②】【第2局①/②】【第3局①/②】
第26期竜王戦は、11/21・22、
渡辺竜王の1勝2敗で迎えた第4局。
その1日目を、簡単に。
香川県での開催、なんと結婚式場ということで
検分当日から盛り上がっていたのですが、
そんなほのぼのムードはどこへやら、
初日からアクセル全開、75手目まで進む熱戦となりました。
竜王戦第4局、先手は渡辺竜王、後手は森内名人。
持ち時間は各8時間。会場は香川県綾歌郡「サン・アンジェリーナ」。
4局続けて▲7六歩△8四歩▲6八銀の矢倉模様の出だし。
ただし、後手の森内名人は△5二金を決め、持久戦を明示した。
ここで△7四歩では、4局連続で急戦矢倉の含みがあった。
先後双方に狙いの展開があったのだろう。
手順的には定跡形。先手は4六銀3七桂型を目指し、
後手は受けて立つかたちになるのだが、
後手は手順前後で先に9筋を突き越した。
最終的には合流するが、△2二玉と入城する手が多い。
先手から先に▲9六歩を指してこないよう形を決める手順で、
具体的には今期竜王戦挑決第3局で
森内名人が郷田九段と対戦した将棋を避けたという意味がある。
9筋を後手が決めてしまえば、基本的に名人戦第5局の進行と合流することになる。
これが森内名人の工夫だったようだ。
そして、名人戦第5局のような展開となれば
後手をもって自信があるということなのだろう。
が、渡辺竜王が狙っていたのは、この▲2五桂だった。
ここ10年以上主流となっていたのは、
同局面から▲6五歩、いわゆる「宮田新手」。
そしてこの宮田新手を入れないと先手は難しいとされている。
その理由については、
先の名人戦第5局を下敷きに
渡辺竜王自身が解説している動画があるので
参考にしていただければ。(8分頃から説明)
竜王は、矢倉で10年以上前に廃れた定跡に活路を見出す。
矢倉4六銀3七桂型の花形であった▲6五歩からの展開に背を向け
先手不利といわれている定跡形そのものに勝負を挑む。
ちなみに、
竜王戦第4局。相矢倉から▲25桂の仕掛けは豊島七段流のようだ。竜王、キュンさん好きだよね。今期A級1回戦でも豊島新手を指したよね。負けたけどね(ぇ)
http://t.co/NKGiD5epY2
— 谷川二森 (@twinforest) 2013, 11月 21
昨年、渡辺竜王が豊島七段と対局した時に豊島七段が指した手で
豊島七段が勝利。その時の印象から、“指せる”と感じていたのかもしれない。
本当に2日制の1日目なのか、と疑ってしまうほどの
ハイスピードで対局は進む。
▲2五桂から定跡形を進むがここで前例は1局に。
先手は進むと不利と言われていたが、局面が落ち着いて
角のラインを使って後手の飛車に圧力をかけていく、この段階では
先後の玉形に大きな差が生じてしまっている。
むしろ先手が指しやすい局面にみえる。
そして封じ手の局面。
後手は△3六歩から攻めあいに持ち込むのではないか、と言われている。
控え室などの評価では、先手が指しやすいとのこと。
ということで、第4局1日目はシリーズ初の相矢倉となりました。
矢倉の後手といえば、やはり森内名人の今期名人戦第5局が思い出されるところですが
森内名人は9筋先行突き越しでそのルートに乗せたかったのでしょう。
一方で渡辺竜王は、そのルートではなく、かつてのルートに活路を見出した。
竜王戦第2局でも、森内名人の急戦矢倉に意表を突かれたようだったので
おそらくその時に指したかった棋譜が本局ではないか。
相当の研究があるのだと思われます。
今期棋聖戦で相横歩取りを指した羽生三冠が「古い定跡に思わぬ鉱脈が潜んでいる」と嬉しそうに述べたというくだりがあったが、今期竜王戦の渡辺竜王にもおなじ空気を感じる。第3局のように、不利の結論がでていても棋風にあった展開の局面を選んでいるように見える。
— 谷川二森 (@twinforest) 2013, 11月 21
ここまでは、渡辺竜王の「定跡への挑戦」という野心的な手が奏功し
先手が主導権を握っているように見えます。
しかし、森内名人はここからの受けが至高。簡単には終わりそうもありません。
竜王が追いつくか、名人が引き離して王手をかけるか。
今後の展開を考える上でも、大きな一番となる予感がします。