【速報版】第26期竜王戦第4局 渡辺明竜王-森内俊之名人。
ちゃんとしたのは後で書きます。多分。
75て目まで進んだ第4局1日目の展開を受けて、
2日目は早期決着なのではないか、という空気があったのは事実です。
1日目の局面で、棋士の多くは先手持ち。
この日のニコ生は1年ぶりに羽生三冠が解説で登場するが
昨年同様、時間の大半を解説以外に割くことになるのではないか、
といった観測すら出されていました。
しかし、それは杞憂に過ぎなかった。
羽生三冠は形成について「どちらかというと後手持ち」と宣言。
その言葉を裏付けるように、局面は最終盤まで難解を極め、
前日の75手が文字通り前座となるような、凄まじい熱戦となりました。
封じ手は大方の予想通り△3六歩。
後手の飛車を狙う角に圧力をかけるが、▲1九角と引かれても
角道は利いているので、前日には先手が指しやすい展開ではないか、と言われていた。
が、ニコ生解説の羽生三冠は4四にできている後手の馬を評価。
先手の角は成り込んでも9一に遊んでしまうが、
後手の馬は先手玉を狙いながら攻防に利いて手厚い。
よって、後手が僅かによいのではないか、と。
その羽生三冠の言を裏付けるような先手の攻め筋。
自然に指すなら▲6三歩成△同飛に▲9一角成だが、
それでは悪いとみたということだ。
変えてひねり出したような▲3二歩打。
確かに取っても放置しても「利かされる感」があるが
手番は後手に回る。先手がよいと思って打ったようには思えない。
よって、後手もこのタイミングで踏み込む。
右図3二の歩を放置して飛車先に先手陣を乱す歩打。
馬と飛車が自然に6筋に重なっていて後手の攻めがつながりそうだ。
後手の流れとみていいようだ。
が、この竜王の▲5五銀が切り返しの勝負手。
歩頭に銀を鋭角に切り込む。銀のただ捨てで駒損になるが
△同歩に▲同角と1九の角を進出させ、馬にぶつける形になる。
後に馬筋を逸らせれば、逆に先手の角が
後手玉を射抜くラインで存在感を発揮できる。渡辺竜王が押し戻した。
ここから形勢は難解となるが、基本的に渡辺竜王が細い攻めを続けられるか
それとも森内名人が受けきることができるのか、という
それぞれの棋風に沿ったせめぎあいが終盤まで続くことになる。
渡辺竜王は角を切って攻め込む。
この▲3四金打が飛車銀桂に当たる痛打に見える。
控え室でも先手の攻めが繋がっているとみられていた。
しかし、ここから森内名人が鉄壁の受けを魅せる。
まずは△5三金。飛車と馬に紐をつけつつ、自陣を補強。
金を自陣に打つ代わりに飛車も馬も動かさずに済む。
そして右図。事実上の勝着となった△5二角打。
自陣に角を放つようでは・・・というような手に見えるが
馬を守りながら飛車取りの先手。
次に▲1一飛成と、香を取られて竜を作られてしまうが
馬を大きく逃がさずに済んだこと、そして二段目に角を置いたことで
後手玉が7~9筋方向に逃げるときに、竜の遮蔽物になったこと。
そういった深慮遠謀が勝負を分けることになった。
先手は様々な秘術を用い、罠を張り巡らせて後手玉を追い込むが、
先手左辺方向に逃げてゆく玉をどうしても捕まえることができない。
この△5四金打が受けの決定打。山崎八段が指摘していた金打で
はっきりと先手の攻めを切らした。
投了図。先手玉は即詰みで、
例えば▲6八金と合駒をした場合には△3七馬と
中盤を支配した竜馬が躍り出て極める形になっている。
後手玉は9筋にまで逃げているが、
ここで1日目の序盤に突き越した△9五歩が安全地帯を作っていた。
というわけで、森内名人が見事に受け切って3勝目。
竜王名人に王手をかけました。
難解な形勢だったものの、2日目は結果的に
森内名人が最後まで竜王の攻めの上を行っていたように思います。
最後に、呟いた内容を置いておいて。
竜王戦第4局。終盤のほうは残業をいいことにニコ生を見ていたのだが、ただただ素晴らしかった。
この局も「切れそうでいて繋がっていく」竜王の攻めと「受からないようで受かっている」名人の受けがせめぎ合って、でも最後にははっきりと勝負が決する。それ自体が奇跡に思えた。
— 谷川二森 (@twinforest) 2013, 11月 22
個人的には、中央に作られて盤面を支配していた馬よりも、1日目に名人が先行して突き越していた△9五歩が、最後の最後に後手玉の安全地帯を作っていたことが「おおおおお」だった。羽生さんもおっしゃってらしたが。
— 谷川二森 (@twinforest) 2013, 11月 22
羽生三冠が後頭部に手をやりながら読む姿を見れたのはよかった。竜王と名人の垂直的な読みの凄まじさを、身をもって体現してくれていたように思えた。それでいて最後に「あっという間に終わった」と締めくくった姿に愛おしさを感じてならなかった。これが村山聖の愛した羽生善治の一端なのだと思った。
— 谷川二森 (@twinforest) 2013, 11月 22
「どんなに疲れていても弱音を吐かず、悔しくても飄々とし、そしていっさい偉そうなことを言わず、そんなそぶりも見せない羽生が村山は好きでしかたなかった。誰とでも同じ目線で話し合い、会話を楽しめる羽生は村山にとっての理想像であった。」大崎善生『聖の青春』
— 谷川二森 (@twinforest) 2013, 11月 22
後日、1日目の展開にも手をいれて、完成させようと思います。