二森日和。

将棋をみた感想。たまにサッカー。ごくまれに雑談。




第23回コンピュータ将棋世界選手権決勝 ponanza-NineDayFever。

朝日新聞のコラム「波聞風問」にまで電王戦の記事が。
しかも突っ込みどころ満載・・・。
せっかくなのであとで取り上げようと思います。

明日から名人戦第三局なのですが、
コンピュータ将棋についてもう少し。

今次世界選手権は1~3位までを
クラスタ構成したソフト(というかシステム)が独占しました。

いろいろ予期せぬ問題は発生するにせよ
総合的な強さを発揮するためには、
現状では仮想・物理両面でのハードの高性能化が
最適解ってことなのかもしれません。

とはいえ、それが絶対を意味するわけでもないのが
将棋の奥深さというやつで、
2次予選でツツカナがGPSにワンパンくらわせたり
決勝では新鋭・NineDayFeverがponanzaとの激戦を制したりしています。

NineDayFeverツツカナもハードよりも
学習過程や読みの切り飛ばし方に重点を置いている点が特徴らしく
物量的な読みの深さより、むしろ無駄な枝や間違った評価をいかに解消するか、
という「軽さ」に着目して成果を出しているとのこと。

こういった発想は、むしろ人間側が
対CPU戦を持つときに参考になるような気がします。
(うそです。紹介してみたいだけです。)

てなわけで、今次決勝で印象に残った激闘譜の一つ、
▲ponanza-△NineDayFever戦を紹介。


決勝3回戦のカード。
ponanzaは2勝(○YSS、○習甦)、
NineDayFeverは1勝1敗(●Bonanza、○激指)。

棋譜再現はこちらをどうぞ。

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本譜は力戦形の角換わりに。

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NDFは牽制にもかまわず棒銀気味に突っ込む。

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ponanzaは馬でこれを咎め、先手ペースで中終盤戦へ。

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戦況を一変させた攻防の馬引き。
9九の馬も警戒させつつ、NDFは入玉を目指す。

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検討陣(?)をうならせたという香打。
王手一閃、無理やり竜を引かせ、後手玉の詰み筋を消す。

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技が冴え、上部脱出に成功し、入玉を果たす。

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大駒の効きをいかして、鮮やかに寄せてこれが投了図。

NDFの序盤の無理攻めはコンピュータらしい、
暴発気味の展開となりましたが、
それを咎めて二枚竜で優位に進めたponanzaを
馬の効きで掣肘しつつ、鮮やかな入玉で逆転。

CPUは線ではなく点で局面を読むといわれますが
終盤戦のNDFは、攻防手を繰り出しながら
流れに沿った手を尽くしたように感じました。

結果、コンピュータの序盤の荒々しさと
盤面を広く使った、魅力的な終盤という
非常におもしろい棋譜になったと思います。

NineDayFeverは決勝で三強と言われたGPS、激指、ponanzaのうち
激指、ponanzaから勝利、混戦を演出、
しかも最終順位はツツカナ・習甦らを上回る5位に。

大規模クラスタには安定感では劣るかもですが
必ずしも将棋ではそれがすべてではない、と、
いろいろ示唆に富んだ結果だったように思います。

第3回電王戦があるとして、実際どういう形になるかはわかりませんが
NineDayFeverの挑戦を見てみたいきもするなー。