二森日和。

将棋をみた感想。たまにサッカー。ごくまれに雑談。




読売新聞にGPS将棋・金子知適准教授の記事が載ってた。

昨日(5/18付)の読売新聞本紙にGPS将棋開発チームの中心メンバー、
チームGPSの小栗旬(自称某女流談)こと、
金子知適准教授のインタビュー記事が載ってます。
GPS関係の記事として非常にまとまってます。

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GPS将棋が優勝した
2012年コンピュータ将棋世界選手権の時の金子さん。

とりあえずネット上には記事がないようなので、参考に。


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編集委員が迫る GPS将棋 金子知適氏

形勢判断 自動学習の成果

 現役プロ棋士とコンピューター将棋ソフトの対抗戦「将棋電王戦」で、ソフト側が3勝1敗1引き分けと勝ち越した。4月20日の最終戦では「GPS将棋」がトップ棋士の一人である三浦弘行八段に完勝した。開発メンバーの金子知適・東大准教授に強さの秘密や将来の目標を聞いた。(聞き手 大塚隆一)

最高のソフト

 ――電王戦の結果には将棋界も驚いていました。
 「対局の結果より、途中で電源が落ちるような事故もなく、最後まで指せたことに満足しています。最高の対局相手とソフトの棋譜が残るのが重要と考えていましたから」
 ――なぜ棋譜なのですか。
 「棋譜を残せて初めて、GPS将棋の強さや弱さ、差し手の良しあしなどの議論もできるからです。その意味で貴重な対局の機会をいただいたことは本当に幸せでした」
 ――何台のコンピューターを使ったのでしょうか。
 「670台です。その大半は実習室に置かれ、学生が授業で使っているiMacというパソコンです。役割分担をしながら1秒間に約2億7000万手を読みました」
 ――いくらプロとはいえ、数百台もを相手にするのは不公平だという声もあります。
 「そうは思いません。プロとの対局では最高のプログラムを用意すべきだと考えました。本気にならないと勝てないとも思っていましたし」

強さの秘密

 ――着実に強くなってきた秘密はなんなのでしょう。
 「探索と形勢判断の能力向上が8~9割でしょう」
 「探索とは先を読むことです。自分がこう指すと、相手はこう指すかもしれない、ああ指すかもしれない、といろいろな展開を考えます」
 「形勢判断とは、先を読んだ後に表れる様々な局面について、それぞれの勝ちやすさを数値で予想することです」
 ――先を読む探索では、どこが進歩したのでしょうか。
 「重要なところを深く読めるようになった。時間をかけて調べるべき展開とかけなくてもいい展開を、メリハリがつけられるようになりました」
 ――コンピューターはすべての場合を読み切るから強い、のではないのですか。
 「よくある誤解です。先の先まですべて読もうとすると10の二百何十乗もの手を調べる必要がある。コンピュータでも手に余る数です」
 ――形勢判断が正確になってきたのはなぜですか。
 「学習のおかげです。コンピューターはプロ棋士の棋譜を分析し、差し手の背景にある感覚的な形勢判断を身に着けています。機械学習と呼びますが、これが自動化できた。GPS将棋は約2万4000の棋譜から学んでいます。以前は形勢判断のソフトを職人芸術的に作っていました」
 ――将棋のソフトを作る人は将棋が強いのですか。
 「恐ろしいことに、開発チームは当初、小学校の時に8級を取った私が最高の棋力という頼りない構成でした」

頂点に立つ日

 ――機械の頂点に立つ渡辺明竜王や羽生善治三冠に勝つのも時間の問題ですか。2~3年後という声もあります。
 「いずれコンピューターが抜き去る可能性が高いとは思いますが、いつかはわかりません。そもそも強さとは何かがわかっていない。でも、だからこそ面白いと思います。」
 ――「トップ棋士はあこがれのスター」「夢を壊さないで」というファンもいます。
 「私も自分のソフト以外は棋士を応援したくなります。ただ、ソフトとプロが対局しないと現れないような局面もたぶんある。将棋の魅力や人間の長所が新たに見つかることもある。電王戦で発見があったという棋士のコメントもうれしかった。それは貴重な財産になるとおもいます」

人間の賢さに近づきたい

人口知能と人間

 ――将棋ソフトを研究テーマに選んだのはなぜですか。
 「研究者としては人間の賢さに少しでも近づきたい。将棋はルールが明確でコンピューターが扱いやすいのです」
 ――人間にしかできないことはありますか。
 「説明や解説です。アマチュア有段者なら、この銀の動き方が勝負のカギ、とかわかりやすく話せる。この部分はコンピューターが手も足も出ない。将来はコンピューターに指し手の狙いを日本語で解説させたい。それは他の分野でも役立つと思います」
 ――人工知能が人間にとって代わり、仕事も奪うのではと心配する声もあります。
 「私は心配していません。研究している側からすると、まだ大したことはできていない。人間に代われるとは思えません。仕事の問題についても、世の中には人手が足りないことの方が多い」
 「隣に置いた時に邪魔にならず、仕事を任せたときには信頼できる。そんなものを作っていきたいと思います」

「人間」対「機械」でない

 23年前の1990年、コンピューター将棋の最初の選手権が開かれた。
 私がその年に書いた記事を読み返すと「パソコン棋士、将棋は5級」とあった。あるソフト開発者は「生きているうちに名人に勝てると思う」と話していた。その夢はいま手の届きそうなところまで近づいてきた。
 そんな日の到来に複雑な思いを抱く人もいるだろう。ただ金子さんも言うように、それは人間と機械の単純な勝ち負けの話ではないはずだ。将棋にとっても、人工知能研究にとっても、そして人間にとっても実りの多いものであってほしい。(大塚)

金子知適准教授

 東京大学大学院総合文化研究科の准教授。専門は人工知能。将棋などの思考ゲームを題材に探索や機械学習を中心とした研究を行っている。

GPS将棋

 東大大学院総合文化研究科の教員・学生によるゲームプログラミングセミナー(GPS)の参加者が中心になって開発。メンバーは田中哲朗准教授、金子准教授ら計6人。世界コンピュータ選手権に2003年から参加し、09年と12年に優勝。今年は3位。

注目すべきは、編集委員の取材後記部分で
必ずしも対コンピュータ戦を否定していない
(というかわりと肯定的)ところでしょうか。

電王戦については、開始前からわりと
朝日新聞が積極的に取り上げていたのですが
読売新聞と日テレは、第2回電王戦第4局あたりから急に取り上げるようになり、
第5局対局後にもまとめ記事みたいのを載せています。

渡辺竜王のSPA!記事で

今はタイトルも持っているので、自分の一存では決められない部分もありますし、いろんな条件がクリアされれば出るでしょうね。

と竜王が語っているところをみるに、
ちょっとした地ならしに感じなくもない。

いまとなっては、開幕の有無も含めて
第3回将棋電王戦のアナウンスがいつあるのか、
皆目見当もつかない状況ですけれども
ちょっとした予兆を感じつつ(気のせい?)
静かにその時を待とうと思います。

※ 追記 21:55

上記で「チームGPSの小栗旬」を自称とか書いちゃいましたが、
実際に第5局のアーカイブを確認してみたところ

時間で言うと開始から1時間2分くらいのところで言っているのですが
藤田綾女流初段が「某女流が金子さんを小栗旬さんに似ているといってました」と
言っているので、自称ではないですね。お詫びして訂正いたします。

なんとなくこのコメの流れで
自称だと間違って記憶してしまってたようです。
この時間帯まではまだ平和だったなあ。