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二森日和。

将棋をみた感想。たまにサッカー。ごくまれに雑談。




第39期棋王戦挑決T 羽生善治三冠-永瀬拓矢六段 電撃のファーストコンタクト。

将棋 棋王戦

ちょっと前の対局ですが、簡単に。

11/15に行われた棋王戦挑決T四強戦から
羽生三冠-永瀬六段戦を紹介します。

対局当日にはカバーできず、後になって確認したのですが
非常に鮮やかな速攻が決まった、
横歩の研究最前線の熾烈さを思わせる棋譜だったので。

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羽生三冠と永瀬六段は初手合い。
永瀬六段は、昨年度に新人王、加古川清流と
2棋戦を制した若きオールラウンダー。

羽生三冠との対局にどう臨むのか、注目されましたが
今年度無敗の「羽生の横歩」を相手に、電撃的な速攻を仕掛けました。


棋王戦はトーナメントベスト4から2敗脱落ルール。
ややこしいが、残った4人のうち2敗したものから脱落、
最後に残った1人が挑戦という方式。
持ち時間各4時間。振り駒の結果、先手羽生三冠、後手永瀬六段。

永瀬六段は、振り飛車党だったが、今年はほとんど居飛車で戦い
それでも7割以上の勝率をマークしている。本局も居飛車を採用。
得意な横歩取りでどう迫るか。

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横歩取り△8四飛で先手は6八玉型、後手は5二玉型。
羽生三冠は、先手横歩ではここ数戦6八玉型を採用している。
王座戦第4局(千日手局)で押さえ込まれた2筋飛車ぶつけに対応するために
あえて7~8筋から攻めを促し、様子をみて5八に組み替える作戦で
王座戦5局ではその構想が冴えた。本局もその方針を援用する。

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これに対し、後手は7筋速攻。
中原囲いを完成させる△5一金を保留して一気に急所に歩を突きつける。
後手の手得が生きて「攻めが結構早い」というのは永瀬六段の談。
▲同歩△8六歩打▲同歩△同飛と攻めが進み、右図。
先手玉の小びんが大きくあけられ、既に角交換から突破されそうな勢い。
やむなく先手から角交換するのだが、手順に△3三桂とはねられ、
桂の利きを生かした△2五歩から2筋の飛車をいじめられそうなかたちになっている。

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後手は飛車を2筋に回って今度は先手右辺を攻める。
先手は辛抱の▲2七歩打。何もせずに△2六歩とされると
▲3八金と受けても△2七歩成▲同金△3九角打から
突破を許すので止むを得ないが、これで先手の飛車がかなり使いづらくなった。

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先手右辺を封じ込めた上で、再び先手左辺へ。
銀を繰り出して7五の歩を取りに行く。
金で受ける先手に構わず突っ込み△8六角打は王手金取り。
どんどん攻めてゆく。

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先手は自陣に手をつけたいが、
後手の攻めを受けていては既に収拾がつかない状態となっている。
「半ば苦し紛れ」という反撃の角打ち。
結論から言えば、感想戦ではこの手以降は特に触れられず
先手は粘っても良くしようがなかったということのようだった。

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先手は終盤、▲2二飛打と勝負。1筋に遊んでいた銀も参加させ
5二の一手から不動の玉に迫る。
しかし、3筋に角と銀でバリケードを作り、飛車を捕獲すると――

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この玉頭から敵陣を射抜く飛車が決め手。
成銀取りをかけつつ△5七歩成以下の詰めろ。

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最後は5七の地点に数を足して、
後手が圧力でこじ開けた場面で先手が投了。
即詰みはないが、逆転の目がなく、投了もやむなし。


初手合いで永瀬六段が羽生三冠から見事勝利を挙げました。
終盤まで難解だったそうですが、こと作戦という意味ではほぼ後手の完封勝利。
後手玉は5二に一手動いただけで攻めつづけるという印象で、
後手番の新山崎流のような、というのは言いすぎでしょうか。

この筋自体は、実は永瀬六段自身が飯島七段にくらったために採用したようですが
そのあたりの感想はすでにツイッターに書いたので、手抜き貼り付け。


横歩は序盤から激しい斬り合いとなるため、羽生三冠のような達人でも
間合いを誤ると一気に形勢を損なう怖さがあります。
永瀬六段がそれを示したというのは、
後手横歩の可能性という意味でも凄まじく大きい。

ただ、日々進化する横歩戦線のなかで、
しかも過密スケジュールの中、今年度9割勝っている羽生三冠の凄まじさも
改めて感じさせる内容だったと思います。

いずれにしても、これでまた後手横歩研究が過熱すること必至。
これに対して羽生三冠が、次はどんな対策を立ててくるのか、が、
もはや楽しみに感じています。