「藤井研と羽生王座と、ネットワークの表象」からみた王座戦。
先日行われた王座戦第3局では、
羽生王座の44手目△3七角が成立するかが一つの焦点でした。
中村太地六段は、前例1局のこの手を受けて
銀桂交換の後、昼食休憩までの1時間48分を使って熟考。
棋譜コメにあるように
「△3七角の将棋は中村さんはあまり考えていなかったでしょうね。『こっちか』という感じだったでしょう。逆に羽生さんとすれば△3七角の将棋を指そうと思っていたのでしょう」(西尾六段)
読み筋を外されて、戦略を立て直すのに時間がかかっているのかな、
考えになかったんだろうなー。
などと素朴に考えていたのでしたが、
ただニコ生のタイムシフトを見ていたら
鈴木環那女流二段がその説を完全否定していらした。
【鈴木環那女流二段のコメント】
中村太地六段に研究会で類似局面を教えてもらうことがあった。
先手中村、後手鈴木でこの形になったが、研究会では中村六段は(前例の▲中村-△屋敷戦とは異なり)▲2五桂とはねずに▲1九角を先に打った。感想戦で、なぜ桂を先に跳ねなかったのかと聞いたところ、(本譜のように)「桂をはねた時に銀を逃げずに△3七角を打たれる筋が気になったから」と答えていた。
ということで、実のところ、中村六段には十分な研究の蓄積があったようです。
その上で、ある程度まとまった時間を使ってこの先の展開を読み込んでいき、
▲4六角から▲8二銀の順を検討していったのでしょう。
羽生王座も、相当に△3七角を研究した上で
打ち込んだのだとおもうのですが、その部分の読みで、既に
中村六段のほうが上回っていた可能性もあるのかもしれません。
時間の使い方からみて、全く思いもしていませんでしたが。
もう一つ、第3局では
初手▲2六歩がちょっと気になりました。
確かに▲2六歩からでも角換わりにはなるのですが
得意とする角換わりや横歩狙いだったら、
第1局のように▲7六歩から進んだほうが無難だろう、と思ったからです。
結果的に、羽生王座が角換わりを志向したので角換わりになりましたが
多少怪しい序盤だったように思ってたんですよね。
が、先日の新人王戦の棋譜を見ていたら
8手目にこんな記載があったりした。
それを知った私のツイートがこちらになります。
新人王戦の感想、というより衝撃的だったのは、8手目の前例が1局のみで、それがこの前の朝日杯、太地ー佐天戦だったこと。ひょえええー、太地先生、3手目▲2五歩をやったのか!まさか、昨日の王座戦で初手▲2六歩はその含み?というか、どれだけ準備してるんだ君らはぁ! #shogi
— 谷川二森 (@twinforest) 2013, 10月 3
太地さんが羽生王座相手に初手▲2六歩から△3四歩▲2五歩を狙っていたのだとしたら本当にすげーな。名人戦第4局(3手目▲2五歩から森内完勝)をあえて羽生王座にぶつけていこうというね。いや、完全に私の妄想だけれども!いやーこわいわー(何)
— 谷川二森 (@twinforest) 2013, 10月 3
君ら=太地・佐天。(豪邸研のイメージで)
前掲しましたが、第2局の急戦矢倉も、
二人の共同作戦という印象が強い。
おそらくだけれど、羽生王座が2手目△3四歩と
横歩を打診した場合には、▲2五歩を考えていたんではないかなー。
妄想ですけれども。
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(「藤井先生には研究会で教わっていますが・・・」)から察するに、
現在の藤井猛九段主催の研究会(豪邸研)メンバーは
藤井猛九段、松尾歩七段、佐藤天彦七段、中村太地六段、伊藤真吾四段とあと一人。
藤井研というだけではなく
藤井九段を除けば、みな複数の研究会に所属しているから
そのネットワークは計り知れない。
研究会でもちょくちょく指されています。流行させたのは松尾さん(歩七段)で、交流がある棋士が目をつけて公式戦で採用し始めた印象があります
としていて、その松尾七段は羽生研のメンバーでもあるわけで。
いろんな情報交換があって、研究が水面下で進むと同時に
複雑に絡み合ったうえで、盤面に現れたり現れなかったりする。
将棋はあまりに他者と隔絶した個人戦ですが
一方で師弟関係、定跡や研究など、
「結」というか、ネットワークの表象でもあるなー、
とかは、結構感じたりします。
そして、そういう部分も将棋の魅力なんだと思えます。
【おまけ】
結局貼り付けますが、王座戦第3局では感想戦まで対局を見守っていた
新婚さんの伊藤真吾四段と中村太地四段(当時)の駆け出し時代のお仕事。
同じシリーズには中川理事(当時)と遠山編集長の貴重なお姿も(巻き込み事故)