二森日和。

将棋をみた感想。たまにサッカー。ごくまれに雑談。




2016年4月「将棋クラスタが選ぶ月間名局賞」結果発表。

思いつきで始まった「ツイッターつかって月間名局大賞を選ぼう企画」。

告知もなく、また短い期間でしたが、
500票を超える投票をいただき、ありがとうございました。

以下、結果と各推薦コメントなどについて
この場をお借りして、取り上げさせていただきたいと思います。

また、月間名局賞に関する紹介については、
前エントリも参照していただければ幸いです。

月神局(卯月大賞)

第74期名人戦 第2局 佐藤天彦八段-羽生善治名人

20160422・23 長野県松本市「ホテルブエナビスタ

棋譜中継応援掲示板)(朝日新聞デジタル

知名度、閲覧数、およびその衝撃もあって
推薦段階で多くの支持を集めた名人戦第2局が
42%の得票を集めて大賞に。

最終盤の衝撃に目が行ってしまいますが、
中盤から終盤に至るまでのねじり合いゆえに
最後の相1分将棋のドラマが生まれたとも。
名人戦ならでは相矢倉の名局だったと思います。
心を揺さぶる対局でした。

【得票】42%(215票相当)
【推薦】13tweet/31RT
【推薦文】

  • 羽生名人が2度詰みを逃し、天彦挑戦者も自玉の詰みに気づいていない時間があった、最終盤の実戦心理を見ることができたと思うからです
  • ▲3六銀、△7一桂など両対局者の得意とする曲線的な指しまわしが光ったと思うから
  • 天彦先生の鋭い読みと持ち味が出た1局
  • 天彦先生が羽生森内渡辺のステージに上がったんじゃないか?(*゜―゜)
  • 佐藤天八段の受けの粘り強さが出て連敗を脱出した名局
  • あまひこ先生が羽生さんに勝ったから!!TLの盛り上がりが半端なくて棋力ないけどなんか興奮した!
  • 羽生名人は最後の詰みのがしの他はしぶとく素晴らしい指し回しだった。挑戦者も素晴らしかった。もし新名人が誕生したら、歴史に残る1局となるでしょう。
  • 最終盤の、え?詰みがあったの??っていう訳わからなさと大混戦がやっぱり凄かったなと。それとニコ生見ながらひたすら“天彦勝て~~”と画面に念を送っていたから(笑)
  • 棋士間でも見解が分かれる難解な中終盤と▲98玉で詰んでいたんだけどあそこで名人に時間を使わせたからこそ、とかお互い詰みがわかってなかったからこその展開では、とかいろんなアヤが奇跡的だった(後半はファンの推測ですが)
  • 棋士が薄闇の中で格闘していることを浮き彫りにした一局。
  • 解説会も行った第74期名人戦第2局に一票。個人的に将棋の面白さを改めて浮き彫りにした一局。
  • この将棋のせいで第一局が選外になるという激戦になる始末。おかしいですよ。第一局は年間でも投票したくなるくらいの1局です。あと、羽生名人の敗局が名局の条件という自説を裏付ける感じで。
  • 今思うのは記憶を消去してもう1度観戦したいくらいの素晴らしい対局だった
  • 人の指す将棋の魅力と、将棋そのものの美しさ、両方を備えた名局だったと思います。
  • 第70期名人戦第5局、あの敗戦以来の無念さを感じさせられたから。異筋の2六銀成がもたらした、一瞬のチャンスを掴めず、必至に追い込まれて負けたあの時の無念さは今もはっきり覚えてる…
  • 先手の挑戦者が苦しい中でも最善を尽くし続けてぐったりしながら少しでも良くなる可能性を追い求め続けた結果、ほとんど起こらない名人の落手に繋げて逆転勝ち。何より木村先生の神解説との親和性が感動的だった。
  • やはり名人戦インパクトは強いですね。中盤のねじりあいから、終盤の寄せ合いまでかなり密度の濃い内容だったと思います

卯月賞(月間名局賞)

竜王戦1組出場者決定戦 5位決定T準決勝 阿久津主税八段-羽生善治名人

20160414 都市センターホテル

推薦段階では名人戦第2局とほぼ同数の推薦文を獲得し、
むしろそれぞれの文に寄せられたRTでは名人戦を上回っていたのが本局。
それだけ「必敗」とみられていた羽生名人の
衝撃的な踏込に魅せられた人が多かったのでしょう。
銀で震撼させることの多い羽生名人の、新たな銀伝説になるだろう1局。
実に今回の賞にふさわしいエントリだったと思います。

【得票】34%(174票相当)
【推薦】12tweet/34RT
【推薦文】

  • 終盤に入りだいたい先手いいだろうと思われていた矢先,西尾六段ものけぞる△5六銀.羽生名人はいつから△5五角を読んでいたのか,長手数ではなかったが恐ろしいものが垣間見えた一戦.
  • 右辺に手がつけられないポナンザ流に対して左辺への歩2枚の叩きのみで崩し、△7五桂や△5六銀のタイミングも絶妙であった。互いに疑問手が少なく、それでいて生まれた妙手順に将棋の深さを感じた。
  • 誰も分からない勝利の分岐点から一気に決めた羽生さんの面目躍如。恐ろしさを見せつけた1局。
  • 最終盤ですね 羽生名人の見切りが凄まじかった まさに「羽生える」
  • 難解な将棋がふわりとおわってしまった。決めての天王山の角も美しい。羽生マジックを越えた羽生マジックみれた。
  • 羽生ゾーンに銀を打たせて勝った一局。観てる方も知らないうちに斬られてたという恐ろしい体験をした一局。
  • 最終盤の超絶技巧と美しい収束に痺れました!
  • 常に先手有利らしき将棋だったが難解なまま何故か後手が勝った不思議な将棋。
  • △5六銀の衝撃
  • 後手の攻めがとても続かなさそうに見えたのに、王手で桂を取られる▲2二歩を手抜いての△5六銀!鮮やかすぎました。
  • もう大好きな羽生さんが物凄く格好良く勝ちを決めたというだけで悶える。良く分からんが、なんか凄い、というのを目の当たりにしてとてもドキドキした。
  • 角換わりから阿久津先生がponanza流の駒組でリードを奪うも羽生名人は離されません!最終盤、最も有り得ないタイミングで放たれた△5六銀!羽生サイキックを超えた羽生サイキックでした!

竜王戦6組ランキング戦準々決勝 門倉啓太四段-中田功七段

20160430 都市センターホテル

振り飛車党の熱い支持を受けて月間名局賞に輝いた本局。
居飛車穴熊が序中盤で作戦勝ちを築いて、
観戦していた振り飛車党もあきらめかけたところからの逆転劇。
タイトル戦でも、トップリーグの対局でもないですが、
多くのファンの心をつかんだ名局だったと思います。

【得票】12%(61票相当)
【推薦】4tweet/9RT
【推薦文】

  • 香車が四枚むかいあったから!そして熱戦だったから!
  • こーやん先生の十八番・ノーマル三間飛車居飛車穴熊を端攻めで粉砕した一局。端の香車3段ロケットも去ることながら、歩を突き捨てての自陣角や細かく一歩得する手順にも職人魂を感じた名局。
  • 居飛車穴熊相手にノーマル振り飛車で勝った対局。全国の振り飛車党に勇気を与えた意味は大きい。
  • 門倉先生といえば初手7八飛戦法を使う三間党である。その門倉先生が三間党筆頭であるコーヤン先生に居飛車で迎撃する。中盤の角の秘打による応酬。端攻めの絶対ともいえるタイミング スリル ショックサスペンスそして迎えr(文字数
  • 門倉中田戦の穴熊相手に悪くなってもうまく粘りそして穴熊を崩したのは職人芸の一言。香車の乱れ打ちも華々しく名局にふさわしい
  • 三間飛車職人コーヤン三間飛車と、居飛車を試行中の門倉先生の居飛車穴熊の対決にゃ!振り飛車がつらそうな局面から打たれた角の秘打、難解な終盤の香者の乱れ打ち……手に汗握る名局にゃ!
  • コーヤン流三間飛車が失敗してからの辛抱が印象に残っています。特に△84角は分かっていてもマネできない手ですね。

第9期マイナビ女子オープン第2局 加藤桃子女王-室谷由紀女流二段

20160427 福島県郡山市「ホテルハマツ」

今回、女流棋戦やアマ棋戦、コンピュータ将棋などの枠を設けませんでしたが
それでも多くの方々から支持を集めたのが室谷女流のタイトル戦初勝利局。
門倉-中田功と同じく、角道を閉じた振り飛車対抗形でしたが、
あちらが大逆転粘勝譜とすればこちらは振り飛車の理想ともいうべき快勝譜。
振り飛車の魅力と可能性に魅せられたコメントが多数寄せられました。

【得票】12%(61票相当)
【推薦】5tweet/6RT
【推薦文】

  • あんまり知らなかった矢倉流中飛車のおもしろさに気付いたから。
  • むろやん初のタイトル戦勝利がただただ嬉しかった。タイトルを取ってほしいという気持ちも込め1票。あと関係ないけどこの日は僕の誕生日でした。
  • 強豪相手に室谷さんが圧勝し、このシリーズで奪取を期待させる一局だったので。
  • 室谷先生の矢倉流中飛車に加藤女王は居飛車穴熊模様で対抗しました。女王の動き過ぎを的確に咎め完璧な指し回しでリード、ついに室谷先生がタイトル戦初勝利をものにしました!
  • 振り飛車の底力を見た!振り飛車が好きなので、僕が選ぶのはこの一局。

推薦局

月間名局賞となった4局には届かなかったものの、
熱い推薦のあった対局を紹介します。
いずれも「一見の価値あり」以上の熱戦です、ぜひ。

新人王戦 黒沢怜生四段-三枚堂達也四段

20160415 都市センターホテル

ほぼ同じ年代の対局は、上座の譲り合いからスタート。
得意の角交換四間飛車に構えた黒沢四段が
ペースを握ったようにみえましたが
三枚堂四段が決め手を与えず形勢不明の大激戦に。
何度か優位が入れ替わるシーソーゲーム、
188手の激戦を最後に制したのは三枚堂四段でした。

【推薦文】

  • 角交換四間飛車の乱戦調の立ち上がりから、お互い技を掛け合い続ける若さあふれる将棋。最後までどちらが勝つのか分からないねじり合いの180手を超える大熱戦
  • 激しい玉頭戦が繰り広げられ、容易に土俵を割らない根性と熱意を両者から感じた一局

王座戦二次予選決勝 森内俊之九段-中村太地六段

20160414 都市センターホテル

森内九段が多用する3手目▲6六歩から、先手中飛車後手穴熊対抗形に。
先手が手厚い指し回しで穴熊を攻略するかに思えたが
後手も鋭い攻め手を見せ、お互い危ういバランスの綱渡りを続ける。
最後は後手が華麗な即詰みを決めたが、
先手にも勝ちがあったとされるなど、
二次予選決勝にふさわしい熱戦でした。

【推薦文】

  • 美濃攻略のお手本のような鋭い寄せが決まった一局。負けはしたものの、盤上を縦横無尽に駆け回る森内先生の飛車に惚れました

竜王戦1組出場者決定戦 4位決定T 深浦康市九段-佐藤天彦八段

20160413 都市センターホテル

現代角換わり腰掛け銀の焦点である端の攻防、その象徴的な1局。
中盤で先後逆の類例局面で、一部ネット上で話題となった
幻の「ウサミン新手」(の類例)が現れるなど盛り上がり、大熱戦へ。
中盤抜け出した深浦九段が制しましたが
最終盤には体が入れ替わったか?と思われるような場面も。
九州出身の二人によるこのカードは絶対熱くなるとの前評判に負けない、
素晴らしい対局でした。

【推薦文】

  • 天彦アベケン戦の類型、盤デレラのウサミン新手、からの終盤の両者の白熱した粘りあい。スマホひっくり返して盤デレラと併せて観たり、互いに簡単には折れないふたりの終盤戦には手に汗握りました


以上、4月度「将棋クラスタが選ぶ月間名局賞」でした。
このほかにも多数の推薦局がありましたが、それらについては是非、ツイッター上の

将棋クラスタが選ぶ月間名局賞

のタグを眺めてみてください。
きっとまだ見ぬ熱戦との出会いがあると思います。

最後に、今回の企画にご協力、参加していただいた皆様、ありがとうございました。
5月の月間名局賞がもしありましたら、またご参加いただけますようよろしくお願いします。

それでは、またの機会で。