二森日和。

将棋をみた感想。たまにサッカー。ごくまれに雑談。




第62回NHK杯準決勝 郷田−羽生戦が凄ネ話。

「凄ネ話」=凄すぎるとネット上で話題に。
いま思いついた。これは流行る!(震え声)

遅ればせながら、3/10放送分の
郷田棋王−羽生三冠戦について。
NHK杯史上に残る激戦となり、
最後の局面で詰み筋を巡るドラマが生まれました。


戦型は後手羽生三冠がゴキゲン中飛車に構え、
郷田棋王が超速で迎え撃つ形に。
駒がぶつかるあたりから、郷田棋王の棋理に沿った手筋に
羽生三冠が曲線的に応じるという状況がはっきりとし
終盤に至って、「これは羽生さんが苦しいだろう」という
展開となったのですが、秒読みのなかで
郷田棋王の寄せの構想が形にならない。

手番が回ってきた羽生三冠は苦悶の表情を浮かべながら
まさに絞りだすかのように導いた手順が凄かった。

もう方々で語られていますが、
そのすごさは画像を見てもらった方が早い。

108手目△8六銀。
ここで詰みに直結しなさそうな桂ではなく
ただで銀を捨てる。
刹那、郷田棋王も解説の先崎八段もその意図に気が付かない。
しかし、ほぼ同時にこの手の先にある詰み筋が見え
郷田棋王はうなだれ、先崎八段は息をのんだ。

以下、
▲同玉 △7四桂 ▲7五玉 △6六馬 ▲6四玉 △7二桂
▲5四玉 △4四金までで、郷田棋王が投了。
先崎八段をして「天才の詰み」と言わしめる
終盤の逆転劇でした。

棋譜的には、羽生三冠が自ら苦しみを招いた感があり
また、もう少し時間があれば郷田棋王も寄せきれたのかな、
という感もあり、早差しならではの逆転という側面は
否めないと思います。

にも関わらず、勝負を決めるその瞬間、
誰もが魅入られるような手を、順を、導き出す。
その光芒は、誰にもまねできない。

この日はニコ生で棋王戦と例の100万円チャレンジがあり、
仕事で職場に出ていた私は、スマホ1台で
ニコ生2番組ザッピング+ワンセグでNHK杯という
すげえ体制だったのですが、さすがに終盤の攻防では、
NHK杯に見入ってしまいました。

テレビ棋戦だからこそ見える鮮やかな棋譜
棋士の苦闘とのコントラスト。
勝利した羽生三冠も、敗れた郷田棋王もやはり素晴らしかった。

明後日の決勝戦は、勝ち上がった
「天才の中の天才の中の天才」羽生三冠と
ついに覚醒した感のある魔王・渡辺竜棋王将(予定)の
2年連続のプラチナカード。

もうずいぶん前に収録は終わっているはずですが
それでもこんなドラマがある限り、
見落とすわけにはいかねーぜー。

棋譜
放送日:2013/03/10
棋戦:第62回NHK杯準決勝
先手:郷田真隆棋王
後手:羽生善治三冠
▲2六歩  △3四歩  ▲7六歩  △5四歩  ▲2五歩  △5二飛
▲4八銀  △5五歩  ▲6八玉  △3三角  ▲3六歩  △4二銀
▲3七銀  △5三銀  ▲4六銀  △4四銀  ▲7八玉  △6二玉
▲6八銀  △7二玉  ▲7七銀  △8二玉  ▲6六銀  △7二金
▲5八金右 △5一飛  ▲3七桂  △3二金  ▲9六歩  △9四歩
▲1六歩  △6二銀  ▲2九飛  △1二香  ▲4五銀  △3五歩
▲2六飛  △4五銀  ▲同 桂  △4二角  ▲5五銀  △3七銀
▲2七飛  △3六歩  ▲2四歩  △同 歩  ▲4六銀  △同銀不成
▲同 歩  △5五歩  ▲5二銀  △同 飛  ▲4一銀  △5四飛
▲3二銀不成△5二銀  ▲2一銀不成△3八銀  ▲1七飛  △2五歩
▲3二銀成 △2四角  ▲6五金  △3四飛  ▲5五角  △6四歩
▲3三成銀 △3五飛  ▲4八金  △6三銀左 ▲6四金  △同 銀
▲同 角  △6三金打 ▲4二角成 △3九銀不成▲3八金  △3七歩成
▲同 飛  △同飛成  ▲同 金  △4八銀不成▲4七金  △4九飛
▲5八銀  △3九飛成 ▲4八金  △同 龍  ▲7五桂  △6六歩
▲同 歩  △4六角  ▲6三桂成 △同 金  ▲5三桂成 △同 金
▲6一金  △5七角成 ▲5三馬  △同 銀  ▲5二飛  △6二歩
▲5三飛成 △5八龍  ▲同 金  △6九角  ▲7七玉  △8六銀
▲同 玉  △7四桂  ▲7五玉  △6六馬  ▲6四玉  △7二桂
▲5四玉  △4四金
まで116手で後手の勝ち