二森日和。

将棋をみた感想。たまにサッカー。ごくまれに雑談。




第71期A級順位戦8回戦・▲羽生−△渡辺 勝負を分けた「共時性」。

*もしかして: 第72期A級順位戦第4局 羽生-渡辺 ▲6六桂

A級順位戦8回戦 羽生三冠−渡辺竜王戦
後手渡辺優勢というところで、
「まあこれはさすがに竜王勝つでしょ」
と思い、翌日の仕事に備えて寝たわけですが
翌朝起きたら羽生さんが大逆転勝利をおさめており

あ…ありのまま(中略)何を言っているのかわからn(ry

・・・という流れが書きたかっただけなのよー。

似たことは、解説していた勝又六段にも起こっていたらしく。


竜王勝勢を予想していた控室・ネット騒然の大逆転劇。
対局室では、一体何が起こっていたのでしょうか。(クロ現風に)


しょーもないアバンもそこそこに、
結論をいつもんさんから引いてくると。


その局面的にはこんなかんじ。

【105手目▲7七銀】
▽渡辺 歩2 香 桂 銀 金 飛

▲羽生 歩4 桂 銀

渡辺竜王が局面をリードしていた
(と検討陣などが思っていた)ところ
羽生三冠が7七銀と、王手を防ぐだけの
「超一流のぬるい手」(島九段)、銀の移動合い。
この段階で後手玉には詰めろがかかっておらず
後手はこの次に△7七同歩成が詰めろになり、
ほぼ勝利を手中にします。

ところが。

【106手目△2三歩打】
▽渡辺 歩 香 桂 銀 金 飛

▲羽生 歩4 桂 銀

竜王は受けの手を選択。
先程も述べたように後手玉には詰めろがかかっていなかったので
丸々1手損となり、羽生三冠に一気に逆転を許す結果となりました。

局後のコメント。

渡辺「ちょっと前の局面で、先手の持ち駒が銀1枚でも詰み、こちらの合い駒に飛車がなくなっても詰みという状況だったので、まさか銀桂を持たれていて詰まないとは想像しなかった。もしちゃんと読んでいたら詰まないことに気が付いたと思いますが、読むまでもなく詰みだと決めつけていました」

羽生「まさか詰まないとは思いませんでした。詰まないなら▲7七銀では▲7七歩と受けるしかありませんが、後手は詰めろでいいわけですから、はっきり負けですね」

つまり、105手前後の局面において、
先後ともに後手の玉に詰めろがかかっていたと「錯覚」しており
羽生三冠は王手を止めさえすれば、詰めろがかかっても先行でき
渡辺竜王は合い駒請求するなど何らかの手段を講じるか、
はたまた王手をかけ続けるかしなければ負ける、と
両者ともに勘違いしていたということのようです。

傍目に渡辺竜王勝勢とみられていた局面は、
対戦者の世界では羽生優勢でとらえられていたという。

実際には、ツイートにあったように
「▲3四桂には△4一玉で際どく詰まない」そうですが
私はちゃんと読んでません。

渡辺竜王がいう先手の持ち駒が銀1枚でも詰むという
「ちょっと前の局面」がこれ。

【93手 ▲3三歩成】
▽渡辺 香 桂2 角 飛

▲羽生 歩4 銀

後手玉に「詰めろ」がかかってます。以下、

▲4二と △同玉 ▲3三銀 △5一玉 ▲2一龍 △4一飛 
▲同龍 △同玉 ▲4二銀打 △5二玉 ▲5一飛 △同金
▲同銀成 △同玉 ▲4二金 △6一玉 ▲7二金まで

の、17手詰らしい。読めない。

ただこの局面では、その後の△5六桂が激痛で
その後の展開(先手の受けの銀打と玉の移動)で
後手玉への詰めろが消えるため、検討陣は
「後手持ち」という判断だったのです。
(もっといえば、検討陣に宮田敦史六段がいた)

しかし、▲4二銀打と、持ち駒銀1枚だけで
詰んでしまう状況が、後の錯覚を生むことになった。


「真実は対局場にはない、
 されど勝負は対局場にしかない。」

たとえば、終盤の局面で
「どちらかが後手玉につめろはない」とわかっていたならば
おそらく別の展開となっていたでしょう。
羽生三冠が厳しい局面と認識していたら
7七銀は打たなかっただろう(▲7七歩か)し
そこで▲7七歩と受けられていたならば
渡辺竜王ももう一度読んでいたと思います。

現在最高峰の棋士2人が
ともに入り込んだシンクロニシティ

勝負は理屈ではないところでついていたのかもしれません。

というわけで、棋王戦に戻ります。

棋譜
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲3六飛 △2二銀
▲8七歩 △8五飛 ▲2六飛 △4一玉 ▲6八玉 △6二銀
▲3八銀 △5一金 ▲3六歩 △7四歩 ▲3七桂 △7三桂
▲4六歩 △7五歩 ▲3三角成 △同 桂 ▲3五歩 △2五歩
▲1六飛 △8四飛 ▲3四歩 △同 飛 ▲5六角 △5四飛
▲3四歩 △2八角 ▲1八香 △1九角成 ▲3三歩成 △同 銀
▲4五角 △8四飛 ▲3六飛 △4四銀 ▲3四飛 △6五桂
▲6六歩 △8八歩 ▲同 銀 △3六歩 ▲同 角 △2三金
▲3五歩 △3四金 ▲同 歩 △5七桂成 ▲同 玉 △5二玉
▲6八玉 △3五銀 ▲2五角 △2四銀 ▲4七角 △1八馬
▲7四桂 △3六歩 ▲8三金 △9四飛 ▲8六桂 △3七歩成
▲同 銀 △2七馬 ▲4八金 △3六歩 ▲9四桂 △3七歩成
▲6二桂成 △同 金 ▲7三銀 △6一金 ▲2二飛 △4二銀
▲2四飛成 △4七と ▲3三歩成 △5六桂 ▲7七玉 △5九角
▲6八銀 △同桂成 ▲4二と △同 玉 ▲6八金 △7六歩
▲8六玉 △6八角成 ▲7七銀 △2三歩 ▲3四桂 △5二玉
▲3三龍 △6四歩 ▲4二桂成 △6三玉 ▲7二銀打 △5四玉
▲6八銀 △4八と ▲6三角 △5五玉 ▲2七角成 △4四銀
▲3五龍
まで121手で先手の勝ち