二森日和。

将棋をみた感想。たまにサッカー。ごくまれに雑談。




全日本卓球 丹羽孝希が激戦の末に水谷隼を撃破、待望の初戴冠。

今日の群馬関係:藤井九段もワイルドナイツも負けた。(あいさつ)

女子と同じく、決勝のカードは
ロンドン五輪代表のシングルス1・2。
順当でありながら、多くの人が
決勝のカードとして待ち望んでいた一戦。

最速か万能か。
勝負はファイナルゲームまでもつれる
大激戦となりました。


/丹羽 4−3 水谷/(国立代々木)

ともに高レベルの攻守と両ハンドを持つ2人。
ただ、超高速前陣速攻とドライブ系のオールラウンドという
戦型の違いが示すように、
どちらかと言えば、先手を取って攻めるのが丹羽、
ある程度台から離れたり、ラリーになっても守れるのが水谷、
という図式になるでしょうか。

勝利に近づくためには、
相手の得意な形を出させず、自分の形に持ち込むこと。
女子の決勝では、いかに相手に分の悪いフォアを打たせるか、が
ポイントでしたが、フォアハンドの威力が半端ない
男子の場合は、いかに先手でフォアを打たせないか、が
ポイントとなりました。

丹羽の場合は、サーブで崩せれば
世界最速レベルの3球目攻撃で必殺形となりますが
逆に水谷が鋭いドライブを打てる形となれば
返されてもラリーとなることが多く、水谷に分があります。

果たして、第1ゲームでは
高速卓球で先手を取り続けた丹羽が制しますが
続く2、3、4ゲームは、水谷が
うまく丹羽の攻撃をさばいて連取します。
打球の出し入れというか、
長短織り交ぜた打球で丹羽の速攻をうまくいなした、
水谷のうまさが目立ちました。

丹羽は台上の攻防でも両ハンドで
強いボールを打ち込める技術があるのですが
水谷がそれをさせない。
中途半端なところに打ち込めば、
水谷のカウンターを食らうか、
拾われて水谷のゲームにされてしまう。
で、強打するのですが、それがミスとなり
気付けば水谷がゲームの主導権を握っている。

とくに第4ゲーム終盤の逆転は、
「水谷すげえ」と思わせるに十分な懐の深さで
かつゲームカウントも3−1。
水谷の勝利も目前か、と思いました。

しかし、ここから丹羽孝希。
まず、第5ゲームで無理打ちをしなくなる。
狙えるときは振りぬきますが、
ラリーになっても粘って対応し、
追いつかれそうになったらタイムアウトで一呼吸置き、
むしろミスを拾ってゲームを一つ返します。

続く第6ゲーム。
しょっぱな水谷の連取で3−0となり、
水谷が派手な雄叫びで心を折りに来ますが
慌てずに好球必打を貫き追いつくと、
徐々に丹羽のスピードに水谷が追いつけなくなる。
クロスから逆を突くストレートが決まったあたりから
回転の速いフォアに得点後間髪を入れずに始めるサーブなど
馬龍をも巻き込んだ丹羽ゾーンに突入。
水谷を置き去りにしてこのゲームも奪取。

そして最終第7ゲーム。
一進一退の攻防を続けますが、
7−7から水谷のサーブ2本を連続ブレイク。
水谷も最後粘りを見せ、10−9まで追いすがりますが
最後は丹羽が振り切って、初優勝を飾りました。

ゲームを振り返ると、
5ゲーム目以降の丹羽の切り替えが素晴らしい。
苦しい展開となった時、やけばちにならずに
丁寧に攻めて、ラリーでもポイントを
取れるようになったことが大きかったと思います。

一方で、甘いボールについては、一撃必殺を忘れない。
その打球観というか、彼我の調子や力関係に応じて
攻めの判断を的確に変えられたというのが大きかった。

丹羽がそういう微調整を行ってミスが少なくなった一方で
その後ミスを繰り返したのは水谷の方でした。
これは水谷が試合勘などを含めて
本調子ではないということもあったと思うけれど
ここでは、苦しい状況を何とかしのいで
6ゲームからピントを合わせて一気に加速した
「丹羽すげえ」の方向で。

高校三年生と、若き全日本王者となった丹羽ですが
U22世界トップランカーという実績を思えば、
その戴冠は遅すぎるくらいという声もあるほどの選手。

まだ最初の通過点くらい。
敵は世界、というより、中国。
その超高速卓球で世界の頂点を目指してほしいと思います。