二森日和。

将棋をみた感想。たまにサッカー。ごくまれに雑談。




第63期王将戦二次予選 屋敷伸之九段-谷川浩司九段 光速の流儀。

いつもんさんのツイートで。

お、おう・・・(´・ω・`)

羽生三冠の華麗な終盤は取り扱ったので、
「谷川九段の光速」についても是非取り上げたかった。

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9/27は王将戦二次予選最終戦が2局。
王将リーグは残留4の陥落3。
その空いた3つの枠をめぐって、二次予選に山が3つ。
勝ち抜いた3人がリーグ入りを果たします。
二次予選の勝ち上がりはこちら。

勝ったほうが王将リーグ入りのかかった大一番。
この前のA級順位戦とは先後を入れ替えての対局となりました。


振り駒の結果、先手屋敷九段、後手谷川九段。
王将戦二次予選は持ち時間各3時間。

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後手・谷川九段のダイレクト向かい飛車。

谷川九段の先手・後手の勝ち星の偏りは屋敷九段以上で
今期に関して言えば、公式戦ではほぼ先手必勝後手必敗。
(達人戦の後手で森内名人に勝っているが、達人戦は非公式戦なのだった)

後手番対策が必須の中で、最近はダイレクト向かい飛車を試しているようだ。
当サイトではA級順位戦・羽生三冠戦がダイレクト向かい飛車採用局。
しかし、結果は残せていない。
順位戦はもちろん、王将リーグでも後手番は事前決定。
本局はリーグに参加するに足るのか、その資格を問う対局ともいえる。

一方、屋敷九段は

角交換四間飛車破り (マイナビ将棋BOOKS)

角交換四間飛車破り (マイナビ将棋BOOKS)


近著で角交換振り飛車対策を扱っており、
ダイレクトにも研究が深いのだろう。
本譜では、ダイレクト向かい飛車の定跡手順である▲6五角を打たずに
別ルートでの攻略を図った。

結果、本譜は先手が対ゴキ中にみえる
超速3七銀からの2枚銀作戦のような形を作り、優位に。

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先手が作戦勝ちと見られていた場面。
1歩得を活かして▲3四歩打→▲3五銀と右銀を好位置に張り出す。
後手は苦しい中盤戦となったが、ここから巻き返す。

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攻めを緩めると先手に一気に持っていかれる後手は
強気の切り込みを繰り返すが、それが奏功したか、
駒が捌けてきてこの局面。
先手が「味の良さに惚れてしまった」とした▲3八角打に
この一見「攻め駒を受けに使うようでは・・・」とか言われそうな
△7四銀打が好手で、形勢を引き寄せたようだ。
(△6五歩のような合い駒では、
 後の▲6五角が激痛だがそれを消している)

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切り札。▲同飛に△4八銀打が狙いで
「この歩を打って、勝ちになったと思いました」とは
対局後の谷川九段の談。

棋士室では△4八銀のとき、▲3二飛成は当初先手よしと思われていたが
一直線に攻めあった後に△6八金と放りこむ手があって、後手勝ち。
よって、先手は▲6四角打とするが、先手は厳しい。

後手は先述した△7四銀打の数手前から模様が良くなっていたようで
対局者はそれを感じていた様子だが、棋士室では先手優勢と見ていた。
が、この角打で棋士室も「後手よし」を認識したようだ。

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棋士室で歓声が上がった妙手△7五金打。
そう、ここは関西将棋会館。谷川九段のホームだ。
「敵の打ちたいところに打て」。
▲7五桂を消しながら角取り。
△8三金と埋めたくなるが、
角を切られた時に後手陣が乱れる。

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そして金を取らせて角取りを手抜いて△6八歩打。
盤面を広く、そして的確に利かして揺さぶる。

この流れは。

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歩1枚を残しての角打ち、先手玉のコビンを狙い撃つ。

光速の寄せ」だ。

▲7八玉△5八飛成▲同金△同竜▲同歩と続き――

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ここで屋敷九段が投了。
▲8八玉△7九角成▲9八玉△7八銀成で
先手玉に必至がかかる。後手玉は寄らず、投了もやむなし。

谷川九段が57期以来の王将リーグ入りを果たしました。
確か私の知る限り、これが今期公式戦の後手番初勝利じゃないか。
その対局を、光速の寄せで決めるあたり、かっこいい。
特に終盤の光速連鎖(△7五金→△6八歩→△5八飛成)では
カタルシスすら感じるかっこよさでした。
王将リーグでも活躍を期待しています。


その王将リーグは今日から開幕しているのですけれど、
リーグのメンバーが凄い。

佐藤康光九段、深浦九段、豊島七段、羽生三冠、
そして勝ち上がりの谷川九段、郷田九段、久保九段。

勝ち抜いた1人が渡辺王将に挑戦。
果たして今回変な写真をとられるのは誰になるのでしょうか。