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二森日和。

将棋をみた感想。たまにサッカー。ごくまれに雑談。




第63期王将戦一次予選決勝 藤井猛九段-中村太地六段 瞬息のオーバーラップ。

8/16、王将戦は一次予選決勝の好カード、
藤井九段-中村六段戦を簡単にレポートします。
藤井九段、三浦九段の対局は、できる限り紹介したいなあ。

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いま行われている王位戦が夏のリーグ戦タイトルだとすると
王将戦は冬のリーグ戦タイトル。挑決リーグは7人で、残留枠は4。
一次予選と二次予選を勝ち抜いてリーグ戦入りを果たせるのは3人。

予選は持ち時間各3時間。二次予選も同時並行で進んでいて
これに勝つと二次予選初戦で屋敷九段と当たります。

藤井九段は棋界一のストラテジスト。戦略に影響を与え続けています。
中村六段は、「進境著しい若手」というポジションから、
もはや世代のエースといった風格になりました。

両者の対決は今回2度目、
前回は朝日杯(2011年)で藤井九段が後手KKSで
当時8割を超える勝率と絶好調だった中村六段を破っている。
2戦目は、相振り飛車となりました。


振り駒の結果、▲藤井九段△中村六段。

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先手四間飛車に対し、後手も四間飛車に構える「相四間飛車」に。
ここまでもかなりの駆け引きがあった。
先手が角道オープン型の四間飛車の構えをみせると、
後手は2筋を伸ばして向かい飛車(って飛車は2筋にいないけど)での相振り示唆。
これを受けて先手は▲2八銀。対向かい飛車性能のよい矢倉や金無双を匂わせ
後手を牽制すると、後手は四間飛車として▲2八銀を咎めた、という状況。

棋譜コメントには

振り飛車振り飛車党総裁と呼ばれる藤井の土俵。かかってこいの気持ちで臨んでいることだろう

とある。
一方、元振り飛車党である中村六段も相振りが異常に強い。
しっかりしたデータではないのだが、王座戦対森内名人の棋譜コメに
相振りを示す局面で10連勝中、とあって、その森内戦も勝っているから
現在おそらく11連勝中と自信を持っている。

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双方陣容を整える。先手は矢倉、後手は木村美濃。
この場合も相腰掛銀というのだろうか。
先手は早々に飛車先を切っており、次に▲4六銀と出て
盤中央に争点を作り、その間に6筋突破を狙う構え。
後手はどこから攻めるつもりだろうか。

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中村六段の狙いは端。角を2四に置いて1筋突破を狙う。
先手が銀を4六に出たことからこそのねらい目。

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1筋から攻め込みつつ、ここで角を斬り込む。
駒割りは角銀交換だが、この後1八にと金を作り、端攻めが成功した形。
香が手に入ったことで、後手には△8六香打の手筋が見える。
後手が指せるようだ。

それにしても、こういうところの大胆な大駒切りには独特の迫力がある。

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先手は入手した角で馬を作った一方で、
後手は先ほどの△8六香打の串刺しを決行。
桂を入手しつつ、挟撃体制を作る。後手優勢。

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直前に飛車を渡して(角と交換)この△6六桂打が厳しい。
▲5九金と引くが、次の△2六角打が決め手となる。
包むように攻めよ、で、先手玉の上部脱出を消している。

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先手も攻め合いに活路を見出すが、
この一見みえない手が絶妙手だったという。
遊び駒を活用、先手の飛車に圧力をかけつつ、後手玉の脱出路を広げている。
後手玉は馬と飛車に狙われているが、7三の地点が空いたことで
後手玉は1段目の桂を跳ねて馬取を敢行しても安全になっている。

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先手は攻めて形を作るが、この馬寄りで投了。
▲4七玉に△3八銀打からの詰み。


相振り対戦は、中村六段に軍配が上がりました。

藤井九段は仕掛けの段階からそもそもよくなかったかもしれない、
としていましたが、それ以降では37手目▲4六銀を気にしていたようです。

本来は▲5五銀右とでてガチャンとぶつけたかったところ、
後手が指せる変化となりそうで保留したが、
その瞬間薄くなった1筋を攻められ、
あっという間に形勢を損ねてしまった、というかんじのようです。

相変わらず序盤から難しくて面白かったのですけれど
すでに42手目の△1五歩と仕掛けられたところでは、
先手はすでに苦しかったとのこと。

それだけ中村六段の攻めが鋭かった、ってことでもあるのでしょう。

それまで後手からは攻め手がなかったように思えたのですが
しかし端攻めのきっかけを作ると、そこからは一気の攻め。

飛車角で切りこんでとられたその裏にさらに打ち込み、
攻めつぶすという、中村六段らしい棋譜になったと思います。

その中村太地六段が登場する第61期王座戦5番勝負は
9/4、仙台で開幕。対するは「夏の羽生王座の一日制」という
泣けるレベルですが、真っ向勝負を挑んでほしいです。