「常識は覆すもの」▲2五歩対△3二銀。
昨日(7/3)行われた第39期棋王戦挑決トーナメント、
深浦-糸谷戦は、開始4手目で異次元に突入。
なんだこれ。
先手の3手目▲2五歩は、
先の名人戦第4局で森内名人が採用し、脚光を浴びた手です。
もともとは、後手の形を縛る効果はあるものの
先手の選択肢も限られてしまうから
損だとみられている手だそうで。
それでも採用するのには、
糸谷六段が一手損角換わりの名手だから
それをつぶすだけでも大きな効果があるという読みなのか。
これにはどうやら伏線があるようです。
将棋世界8月号の「突き抜ける!現代将棋」によると
ついにはあの木村までが▲2六歩~▲2五歩を採用。相手は糸谷六段。結果的にゴキゲン中飛車の角交換型になりましたが、糸谷の得意戦法である一手損を封じて満足、というわけです。木村がこのオープニングを指すのはプロになって初めてのこと
というわけで、
この流れの上で深浦九段が採用した可能性が高い。
なので、糸谷六段はおそらく
応手を考えてきたであろうこの局面。
糸谷六段は△3二銀と指し、4手目で前例がすべて消えた。
普通は△3三角と上がり、飛車先を受ける。
「飛車先交換3つの得あり」を許さないため。
ただ、その角上がりを後の手順で手損にされてしまうと、
先の名人戦のようにそれが大差となりうる。
が、△3二銀は2四の地点を受けないわけだから
先手の飛車先切りを許すわけで、
それでもその方が手損なく駒組みができますよ、
という尖った手です。
飛車先交換に価値を示さないのは、
コンピュータ将棋にその傾向が強いというのですが
例えば、電王戦のponanza-佐藤戦でも
飛車先を切らすことに特に意味を見出さない。
糸谷六段も、飛車先交換自体が有利不利ではなく
「それが相手の得にならない指し回しをすればいい」という
発想で臨んだ結果だったかもしれません。
ちなみに、この対局はその後
2筋で向かい飛車となりすぐさま飛車交換という
超異次元ハイパーバトルと化しましたが、
そのよくわからん力戦を糸谷六段が押し切って勝ちました。
常識は覆すもの。もともと一手損だって
往時なら破門級で、現在では研究が進んで
厳しくなっているといいますが
それでも使い手によっては
「常識外であること」そのものが武器となりうる。
定跡とそこから外れることへの際どいバランス。
CPU戦が入ったことで、そのボーダーはさらに
曖昧模糊となっていますが、だからこそ面白く感じたりします。
何が言いたいかというと、
ちなみに今月の将棋世界「突き抜ける!現代将棋」はその▲2五歩特集。昨年度の先手勝率.351と散々だそうで、それを名人戦で採用した森内名人すげえというしかないです。 #shogi
— 谷川二森 (@twinforest) 2013, 7月 3
森内名人すげえ。