第72期順位戦B級1組2回戦 松尾歩七段-広瀬章人七段 超速の両翼銀、盤面を制す。
本稿を書いている段階では、
明日から竜王戦本戦トーナメントが始まるのですが
その前に少しでも順位戦中継局についてまとめておきたい。
ということで、今回記事は6/27開催の
順位戦B級1組2回戦から、松尾七段-広瀬七段戦を。
手前右側が松尾七段、奥左手に広瀬七段。
6/6に行われた順位戦B級1組開幕戦では
松尾七段が鈴木八段に、広瀬七段が高橋九段に
それぞれ勝っており、昇級に向けて連勝をかけた対局に。
後手番広瀬七段のゴキゲン中飛車に対し、
超速からの「松尾新手」が形勢を大きく動かしました。
本譜は△ゴキゲン中飛車対▲超速3七銀。
先手は穴熊に組まず、
左銀も超速のようにポンポンと7七まで上がる。
これをみて、後手も手数がかかる穴熊ではなく美濃に囲う。
既にこの段階で前例は3局しかなく、先手1勝、後手2勝。
その先手勝利は昨期順位戦で松尾七段が久保九段に勝ったもの。
本譜はその後も前例をなぞって進む。
銀交換を経て焦点の局面。
前例では先手が▲5三銀と打ち込んで△5一飛に
▲1六歩と角を取りに行ったが、
この時に△3三桂で後手が指せるという。
よって先手は別の構想が必要。ここで先手が長考に沈む。
と、これが新手。▲5三銀、△5一飛に
▲1六歩ではなく▲6八銀。
一度上がった銀を戻す手だが、
はるか先の△4八飛が王手金取になるのを避けているという。
これで先手がいいようだ。
「先手よし」とされた検討・研究どおりに進んでいましたが
ここで角底の歩で受ける斬新な一手。
飛車は成らせてやるが覚えてろという。
結局先手の飛車を成り込ませることを保留させたのですが
後手はその間に手を作らなければならず、
忙しいことに変わりはない。
よって、後手は攻め合いに持ち込みたい。
しかし、これは傍目にも先手の体勢のがよさそう。
攻め合って駒がばらけてこの状態。
後手は先手玉に圧力をかけながら玉を上部に逃がしたい。
しかし、先手玉はセーフティを保ち、
後手玉に適当な受けがなく、ここで投了。
松尾七段が勝利しました。
松尾七段は、超速3七銀-7七銀の形で
久保九段・広瀬七段と、現代振り飛車の雄による
ゴキゲン中飛車を連破したことになります。
7七に上がる形は、ゴキ中穴熊を
牽制しながら超速で上がった銀を生かすことにもなり
合理的なのかもしれません。
また6八銀と引いた形、基本的にはそれで
後手の猛攻をしのいでしまったのですが、
あれなんて囲いなんだろう。
いずれにしても、独自の研究が冴えた松尾七段の完勝譜でした。
これは「松尾流ゴキゲン中飛車破り」とか言う感じで流行る!のかも。