第72期順位戦C級1組1回戦 菅井竜也五段-阿部健治郎五段 構想力、雪原に対抗形を敷く。
6/25は順位戦デーでして、
A級順位戦▲羽生-△谷川戦と、順位戦C級1組が一斉対局。
そのうち携帯中継は3局あって、先のA級と
C1桐山-斎藤戦、それから本局となっています。
基本的に全部紹介できたらと思いますが、
まだB2が一つも作れていないので、いつになるやら。
菅井五段の画像は左右反転してますので
言われてみれば不自然かもしれん。
だが、それはある意味今回の記事に合っていた。
将来を嘱望されている若手のホープ同士の対戦。
というか、最近ホープって使わないですね。
まあそれはそれとして。
ともに順位戦勝率が高く、
かつともにすでに棋戦優勝を果たしている。
昇級も狙える2人の激突は、
意外なほどの大差で決着しました。
振り飛車党の若手エースの印象が強い菅井五段は
初手▲5六歩、中飛車を宣言。
後手の阿部五段は居飛車党ですが、
先手が振ってきた場合、相振りに構えることが多いそう。
結果、先手中飛車、後手三間飛車の相振りに。
相振りは王座戦の森内-中村太戦でも見ましたが、
定跡があまり整備されておらず、力戦系になることが多い。
本局はどうでしょうか。
後手はオーソドックスに美濃囲いですが
先手は浮き飛車に構えたと思ったら
玉は左へ、香が上がって穴熊を目指す。
結果、相振りなのに玉を盤の左辺で組み合う
対抗形のような形になっている。
若手ながらさまざまな構想を実戦に投入している菅井五段ですが
かなり実戦的な相振り対策のように感じます。
先手の右辺で主導権の握りあいが続くなか
先手は穴熊の強度を上げることに成功。
後手は飛車を確保できるが、その攻略に手間取って
飛車を取っても囲いを崩す決め手にならない。
むしろ、飛車を取らせたほうが
先手は固さと遠さを生かせる展開。
決定的ともいえる角の進出。
角を抑えている間に5三にと金を作られてしまうが
事実上、後手にはそれを阻止する手立てがない。
そして投了図。先手玉が全く手つかずでは、
受けにまわる余力なしで投了もやむなし。
終局時間は17時21分で、持ち時間6時間だが
菅井五段の消費時間はなんと1時間54分。
考慮時間があってもノータイムで打つという
菅井流が冴え、中押し勝ちで初戦を飾りました。
先ほど、相振りからは力戦系になることが多いと書きましたが
菅井五段は中飛車を居飛車と見立てて対抗形に組むような
一見「無理筋」を平気でやってのける。
結果、浮き飛車をおとりにして後手に有効な攻撃をさせず
その間に自陣を固くして、気が付けば作戦勝ちを築いていた。
そういう構想のダイナミズムと思い切りの良さ、
時間への無頓着さが、彼の世界なんだろうな、と思わせる勝利でした。
菅井五段が準優勝した第6回朝日杯の観戦記で
金井五段と長岡五段が菅井五段について語っている部分があるのですが
本当にこの通りの強さが出た対局だったと思います。
ちなみに、私は藤井九段・三浦八段の西村一門というだけで
応援確定のグンマーなので
阿部健治郎五段を応援していたのですが、残念です。
でもまだ先は長い。昇級目指して頑張ってほしいです。