二森日和。

将棋をみた感想。たまにサッカー。ごくまれに雑談。




第61期王座戦挑決T準決勝 郷田真隆九段-渡辺明竜王 小技を断ち切る一瞬の銀。

羽生王座への挑戦権をかけた決定トーナメントは準決勝。
2局のうち、最初に組まれたのは
棋聖戦挑決でもみられた郷田-渡辺戦。

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このカードは最近では竜王が3連勝中。
先手を引いた郷田九段はここで一太刀入れたいところ。

横歩で進行した本局は、
中盤まで互角で進行していたようにみえましたが急転直下、
突破口を見出した先手が一気に駆け抜けました。


トーナメントはこちら。

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横歩取り8五飛、
先手は6八玉、後手は4一玉形。
渡辺竜王の後手番8五飛4一玉形は
棋聖戦第1局A級順位戦1回戦に続き3連採。
しかし、両局とも負けているのが気がかり(フラグ)。

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中段に大駒がラインを交差させる
横歩らしい華々しい(激しい)展開に。
とはいえ、まだ定跡というか前例のある展開。

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中央で向き合った馬を先手は金が出て交換。
堂々としているが、玉は大丈夫なのか。

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手裏剣を飛ばす。放置すると城内に火が付き
しかもこの玉形で桂を渡す。
同銀で玉が狭く、同玉では玉頭に狙いが付く。
後手の小技がさえている。
先手はここである程度攻撃を決めなければならない。

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後手陣を乱して、飛車を払ってから筋違い角。
飛車を狙いながら2三の地点を経由して
間接的に4一の玉に圧力をかけている。
結果的にこの角打が大きなポイントだったようで
飛車を△8四に逃げていれば、
かなり大変になっていたとのこと。
しかし、渡辺竜王は△8四飛では先手の猛攻を受けきれないとみて
攻防に利かすため△2四飛と逃げたのですが、
次の▲8八玉が渋い。一見攻めつぶせそうに見えるも
飛車が左辺に逃げた後では
後手に有効な手駒がなく、攻めが続かない。

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そして決め手となった▲3四銀。
直前の玉頭への打診△8六歩を手ぬいての強烈な踏込み。
飛車の横利きを止めているだけにみえて
飛車角銀桂が2三、3三、4三の地点に
殺到する順が見える。
飛車は事実上封じ込められ、後手は攻め手も失う。

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で、これが投了図。
先手は自然な手を重ねれば
飛車が4三の地点で成ることができ、
その局面では後手の受けは難しい。
一方、右辺が広い先手玉を捕まえることは至難とみて
指す手がなかったようです。

感想戦では73手目▲5六角からの変化を中心に
検討したようですが、そこから投了までわずか14手。
一気に局面が動いた印象があります。

一手一手が重い横歩ならではともいえますが、
互角に進行していた形勢が変わったと見るや
一気に自玉の玉頭の歩打ちを手ぬいて
銀を打ちつけた、郷田九段の堂々たる一閃が印象的でした。

挑決は、森内名人と中村太地六段の
勝者との間で行われます。どちらが来ても面白そうです。
森内-中村戦も携帯中継があるそうなので、
フォローしたいと思っています。

それにしても、渡辺竜王は後手番横歩で
自ら誘導しながら続けざまに負けている印象があります。
なにか狙いがあるのでしょうか。
ピントを合わせているような、そうでもないような。
うーん・・・。