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二森日和。

将棋をみた感想。たまにサッカー。ごくまれに雑談。




第72期A級順位戦1回戦 郷田真隆九段-行方尚史八段 飛竜地斬、再び王を討つ。

【第72期A級順位戦 まとめ】

第72期A級順位戦1回戦は分散開催。
開幕局・三浦-屋敷戦に遅れること4日、
2組の対局が行われました。

というわけで、6/14の対局の中から、郷田-行方戦。

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対戦日までの今季勝率がともに8割を超える2人の対戦。

前回A級昇級の際、1勝にとどまり
即降級となった行方八段にとっては、
再びの舞台でどこまで自分の力が通用するのか。

試金石となる対局だったと思いますが、
開けてみれば、行方八段の覚醒を確信させるような、
力強い棋譜に結実させ、存在感を示しました。


本局は手損のない正調角換わり。

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相腰掛銀に進行。

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後手側から仕掛けて先手の攻めを誘う。
まだ定跡手順だが、最近では後手側は
金の前後ステップだったり、9一の香を先逃げしたりして
先手の仕掛けを待って反撃するパターンが多い印象だったので
後手側に何か用意があることをうかがわせる展開。
この後、先手は▲6四角打で飛車を9二にどかせてから角を引き、
右辺攻略を狙う、というのが従来の進行。

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△3五歩で角を招いておいて、
歩を二つバックさせる△4三歩。
今後の攻防の中心である4筋で
手を完全に戻すことになるため見えにくい。
指されてみると、先手が突破を狙う
4筋の傷を消しての受け切りが視野に入り、
行方八段の構想が際立ってみえる。

しかし、これは行方八段の錯覚が生んだ偶然の一手だったそう。
とはいえ、この手によって先手の攻めがつながる順が
一気に細くなった印象。

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先手は角・飛車を切り飛ばして後手の陣形を乱し、
小駒で勝負をかける。形勢は後手優勢だが
後手の駒台には大駒が多く、攻防に融通が利かないときつい。
後手はこの局面で1時間1分の大長考、読み切りに入る。

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竜を切って寄せにかかる。
後手の懸案だった大駒も攻防に効いており、
全駒が躍動している印象を受ける。

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最後は9筋に閉じ込められていた飛車までが先手玉に迫り
ここで投了。投了図以下は
▲8七玉△7六金▲8八玉△7七金▲同桂△8七歩
▲同玉△7六角成▲8八玉△8七銀▲8九玉△9九飛成
▲同玉△9八銀成までの鮮やかな即詰み。

錯覚があったとはいえ、それを逆手に勝負手を放ち
難解な中終盤から最後は氷漬けとなっていた飛車を活用して
即詰みに討ち取るという、鮮やかな勝利でした。

この展開は、同じくA級棋士を破って王位挑戦を決めた
第54期王位戦挑決 行方八段-佐藤九段とほぼ同じ。

自陣に封じられていた飛車が、最後の最後に王を討つ。

先のNHK杯戦でもそうでしたが、
粘って最終盤で討ち取るというスタイルがはっきりとものになれば
目標はA級残留から必然的にもっと高いものになっていくかもしれません。

それだけのものを感じさせるA級復帰戦でした。