第84期棋聖戦第1局 羽生善治棋聖-渡辺明竜王 一日制の王、健在。
女流王位戦第4局すげー。
正直4時過ぎには終わると思っていました。
その後、果てしなく続く終盤戦に見入ってしまい、
こんな時間になってしまった。
あと、王座戦挑決Tの中村太地-佐藤康光戦も凄い対局でした。
それにしても毎日のように興味深い対局があるのはすごいことです。
そしてその頂点にあるのがタイトル戦。
史上初の三冠対決となった第84期棋聖戦は淡路島で開幕。
淡路島といえば、波戸康弘に加地亮と、
日本代表のウィングバック(サイドバック)を
2人も輩出していることで有名ですが、
そういう風土なのかしらん。
(ちなみに波戸さんは将棋好き)
棋聖戦は、トーナメントも番勝負も持ち時間4時間制。
つまり、今年からは誰が最強の電王戦適性棋士なのか
ということを決定する場でもあり、
だからこそ第1局のニコ生解説が船江五段で、
次が塚田九段なんじゃないかと勘繰ってみたりします。
それはともかく。
第1局は、羽生棋聖の「横歩取り8五飛対策」が炸裂。
渡辺竜王も歩を使った反撃で間合いを詰めますが
羽生棋聖がその攻めを堂々と切って捨てました。
中座飛車8五飛。
ニコ生解説の船江五段によると
8五飛は山崎流が出て衰退したものの、
最近になってまたよく指されるようになったということ。
ちなみに、羽生-渡辺は今年に入ってから横歩はこれが3局目。
全て羽生先手で1勝1敗。
羽生勝ちのA級順位戦では、渡辺は8五飛。
負けた朝日杯では、8四飛。さて。
先手は角交換から左桂を跳ねて飛車を咎めに行く。
同じく船江五段によると「2~3年前に流行った形」とのことなので
8五飛になった時用に羽生棋聖が準備していた作戦なのではないか、
という見立てをされていた。
7筋で突き捨ててから、▲7二歩打。
▲7一歩成から△同銀と囲いを乱して
飛車を狙った▲7三角打をにらむ手。
後手は▲7三角を受けるため△8三飛としますが。
ここで前例から離れる新手。
と金が7二に引くと銀が助からないので同銀の一手。
そこから▲9六歩と桂頭を狙って攻め合う方針で、
本譜も実際、そのような展開に。
双方の桂が先手の左辺で並ぶ。
しかし、後手の桂が跳ばされた感がある一方で
先手の桂跳ねは、数手後に後手飛車を縛る意図がある。
▲7一歩成として同銀と取らせた効果により、
この瞬間は△5三桂成を防げない。
よって、後手飛車は▲8四歩打に9三に逃げることになるが
先手は中空に放たれた飛車を閉じ込めることに成功した上に、
飛車のどいた地点に角をもぐりこませ、
馬を作ることにも成功。
これで先手は主導権を握ったまま終盤戦に向かうことができそう。
▲7一歩成は確実に囲いを乱せる「時限爆弾」として
後々勝負所で突くべしというのがこれまでの見解でしたが
こう進んでみると、歩成一発で7~9筋の後手陣内を
完全にかき乱している。
渡辺竜王は連続の歩打で拠点を作ろうとする。
8五の桂がとられる前に攻めをつなぐ手を作らなければならない。
馬を下がらせて自陣角を押し出す。
歩の連打から後手が大分盛り返したような印象。
しかし。
先後で飛車の自由度に差がありすぎる。
どの将棋でも飛車の活用度の差は形勢に大きくかかわりますが
序盤から両エースパイロットを中空に放つ横歩戦では
その傾向がさらに顕著。結局後手角を引かせ、先手の優位は変わらない。
後手も馬を作れたものの、その後が続かない。
先手は斬りあいで勝てると決めに出た。
その後、いろいろありましたが
竜王の反撃は通らず、羽生棋聖が着実にリードを守って
勝ち切りました。最後は即詰みもあったようですが
「読み抜けして大参事となるより、安全に必至に迫ろう」
という石橋叩きっぷりで竜王が半ばキレる(本当にキレてたかは不明)
といった場面も垣間見えましたが、
まあなんというか、羽生さんらしいのか?
そんなわけで、先手番の羽生棋聖が先勝。
作戦自体は準備があったのでしょうが、
森内名人との名人戦でボコボコにされた直後だということを考えると
一日制でのデタラメな強さは健在だと思わされました。
もっとも、渡辺竜王は棋王戦でも
郷田さん相手に後手番の第1局を落としているんですが
その後は全く寄せ付けませんでしたし
研究手順を示されてもある程度勝負まで持っていくことを見るに
激おこな竜王の巻き返しにも期待したいところです。
「見る将」には横歩は難しくてわかりづらいぜーとか
当初から思っていたんですが
最近は横歩を見るのも楽しいです。
むしろわかんねーと言いながら見るのが好きです。